Look 「EAST ASIA」

ある日、生協で買い物していたら、どっかで聞いたような曲が流れてきた。これは中島みゆきの「糸」ではないか。誰かがカバーしたんだな。声の感じがミスチルの桜井に似ているがもしや、と思ったがその時は気にかけなかった。でも最近調べてみたらその嫌な予感が当たっていた。「沿志奏逢」という他人の曲のカバーばかり集めたアルバムを出した Bank Band のボーカルが Mr.Children の桜井和寿だそうである。このアルバムで、中島みゆきの曲では「糸」と「僕たちの将来」がカバーされている。

俺は Mr.Children の曲が好きになれなかった。アルバム「BOLERO」(1997年 3月)と「DISCOVERY」(1999年 2月)を聴いてイヤになってやめた。あのろれつの回らない酔っぱらいのような唄い方。「シーソーゲーム」の歌詞で「ねえ等身大の愛情で」の部分、「ねえとうしんだいのーあーーい、じょっでー」言葉一語一語を大切に扱ってほしい。「いつだって君は曖昧なリアクションさ」リアクションってこの曲がシングルで出た1995年当時はまだ TV 業界用語だったと思う。チルミスのライサクも業界に染まってしまったか。「光の射す方へ」の「思い知らされてらぁ」こういう品のない言葉遣いが嫌い。「ラララ」なんて今さら何言ってんだか、としか思わない。

カバーするだけなら勝手にどうぞ、俺は無視してればいいのだが、この「糸」が住友生命の TVCM で使われるとなると黙っているわけにはいかない。住友生命のトップページから「松嶋菜々子のページ」→「最新のCM情報」とたどると詳細情報や動画も見られる。そしてこの「糸」が Mr.Children のファンに絶賛されているらしいのを知るとなおさら言いたくなる。それは Mr.Children の桜井の曲ではない、中島みゆきの曲だ。中島みゆきの「糸」を聴け。アルバム「EAST ASIA」(1992年10月)に入っている。ちなみにこのアルバムのタイトル、中島みゆき本人は当時ラジオで「イースト エイジア」と読んでいた。「糸」はその後シングル「命の別名」(1998年 2月)のカップリングとしてシングルカットされた。

例のカバーアルバム「沿志奏逢」の 1曲目が「僕たちの将来」である。しかしなぜこれをカバーする? まさか、

青の濃すぎる TV の中ではまことしやかに暑い国の戦争が語られる

これを言いたかっただけじゃないのか。中島みゆきの曲に安易に政治的メッセージを求めてそれを利用したがる人々がいる。その代表例が「3年B組金八先生」第2シリーズで使われた「世情」(アルバム「愛していると云ってくれ」1978年 4月)。

中島みゆきというのは初期は暗い曲が多く、7枚目のアルバム「生きていてもいいですか」(1980年 4月)の「うらみ・ます」あたりでその極限に達する。次のアルバム「臨月」(1981年 3月)からは少し "軽く" なり、同年10月シングル「悪女」がヒット、10枚目のアルバム「予感」(1983年 3月)の「ファイト!」である種の悟りのようなものを得て一区切りつく。そして次のアルバム「はじめまして」(1984年10月)からまた新たなスタートラインに立ったという感じで、その後紆余曲折、試行錯誤を経て「夜を往け」(1990年 6月)あたりで「夜会」という表現手法を確立して安定する。というのが定説だと思っている。

「僕たちの将来」はアルバム「はじめまして」(1984年10月)に収録されている曲である。この新たな方向を模索し始めた微妙な時期の曲をなぜ選んだのかがわからない。中島みゆき本人がセルフカバーするのならわかるが。実際「いまのきもち」(2004年11月)でこのアルバムの「はじめまして」という曲をセルフカバーしている。それに「僕たちの将来」は名曲と呼べるほどのものでもないと思う。これは俺の主観だけれども。「ap bank」とやらの活動がどんなものか知らないが、もしもこの曲を安易に政治的メッセージとして利用したかったのであれば、縦の糸と横の糸で布を織りなすこともできず、「そうしそうあい」どころか片想いに終わっていると言えよう。

住友生命といえば先に言及した「ファイト!」を1994年に CM で採用していて、「非常に腹が立った」と当時の日記に書いてあった。この曲はシングル「空と君のあいだに」(1994年 5月)のカップリングとしてシングルカットされた。その年 4月に始まった中島みゆきの FM ラジオ番組「お時間拝借」のスポンサーも住友生命で、番組中に流れた CM について「妻子持ちのトラックドライバーだとか、1時間50分かけて通勤する会社員だとか、どうでもいい話だ」と書いてあった。1994年 4月 9日(土)第2回放送を聴いての記述である。

ファイト! 闘う君の唄を
闘わないやつらが笑うだろう

この曲で重要なのはここではない。

ああ 小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく
諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく

ここである。

昔の日記を見たついでにもう一つ書いておくと、1994年 3月13日(日)の新聞朝刊に製薬会社の団体の全面広告が載っていて、そこに「傾斜」(アルバム「寒水魚」1982年 3月、「いまのきもち」2004年11月)の歌詞が引用されたとあった。

としをとるのはステキなことです そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです そうじゃないですか

実はこの後の部分が重要なのである。というかこの後の部分を知らずにいきなり「ステキなことです」とだけ言われても意味がわからないだろう。それとも不健康な老人や痴呆が増えるほど製薬会社は儲かるから「ステキなこと」だということなのか。

追記: 6月 7日

それなりに時間かけて書いた長文なんでどっかトラックバック送る所ないかなあ、でもミスチル批判してるからミスチルのファンは嫌がるだろうし、その上一部の中島みゆきファンまで批判するような事書いてるし、1994年の住友生命の CM に腹が立ったなんて人もいないようだし、敵が多すぎてどこにもトラックバック送れないなあ、結局この長文は誰にも読まれず日の目を見ずに Web の奥深くへと埋もれていくんだろうなあ、と思いつつググッてたら、2ちゃんねるのこんなスレを発見。

HIGHWAY61(新人バンド)が中島みゆきのファイトを盗作

http://music4.2ch.net/test/read.cgi/music/1115296028/

HIGHWAY61「サヨナラの名場面/Sing A Well

Amazon のカスタマーレビューでも非難の嵐。笑った。それから Bank Band「沿志奏逢」、Amazon ではプレミア値で出品されているが、ブックオフで 1,650円で売っていた。

追記: 2006年 4月 2日

リンク先の 2ちゃんねるのスレが終了しているが、検索したらこんなニュースがあった。

HIGHWAY61、中島みゆき「ファイト!」を盗作していた (SANSPO.COM、2005.12.24 更新)

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