君と夏の終わり / 八月は夢花火

大学の頃ゼミで、宮崎駿アニメならどれが好きかという話題になって、他の学生は「ナウシカ」がいいとか「トトロ」が好きとか言って、僕は「天空の城ラピュタ」がいいと言ったら、ゼミの教授に「お前らしいな」と言われた。またある日、カラオケで井上陽水「少年時代」を唄ったらその時も「らしいな」と言われた。彼は僕をどんな風に見ていたんだろう。

井上陽水「少年時代」は映画「少年時代」(監督篠田正浩・脚本山田太一、1990年)の主題歌で、この映画は柏原兵三の小説「長い道」とそれをベースにした藤子不二雄 A のマンガ「少年時代」の両者を原作としている。僕が田舎育ちであることを知っていたから、この映画に出てくる田舎の少年のようなイメージで見ていたんだろうか。宮崎駿アニメに関しては当時はまだ「紅の豚」が公開された頃だったが、「ナウシカ」から「紅の豚」まで 5 作品のうちで「ラピュタ」だけ主人公が少年である。素朴な少年の心を持つ男とでも見ていたんだろうか。

僕が「ラピュタ」がいいと言ったのは、それまでの 5 作品の中で最もテンポが良く無駄のない展開だと感じたのと、科学技術を盲信した人類の悲劇と自然界の生命力の強さというテーマに共感したからだ。「ナウシカ」は冗長で環境保護という主張が強すぎる、「トトロ」は単なる童話、「魔女の宅急便」は少女の成長物語、「紅の豚」は戦争への罪悪感と反戦という主張だけ。

そして僕が ZONE「secret base 〜君がくれたもの〜」が好きだと言ったら、やっぱり彼は「らしいな」と言うんだろうか。

僕はこの曲を二人の少年の別れではなく、少年の頃の淡い恋の話だと思っていた。僕は子供の頃にこの曲のような別れを経験したことはないので「10 年後の 8 月」なんて約束もしたことはない。永遠の別れならあるけれども、そんなに仲良くつき合っていた友達でもなかったし、その前に叔父の事故死や 2 歳の従妹の焼死を見ているので身近な人の死への免疫はある程度あった。

田舎では secret base すなわち秘密基地なんてものを作る必要はない。大人の目に触れない場所なんていくらでも見つかる。「夏休みも あと少しで 終っちゃうから」とあるが、北海道では小・中・高校とも 8月20日くらいで夏休みは終わり。

ところで井上陽水「少年時代」の歌詞が齋藤孝『声に出して読みたい日本語(4)』(草思社、2005年)に載っているのを以前見かけて驚いた。あの詞を「夏が過ぎ、風あざみ、…」と朗読しろとでもいうのか。陽水の詞はメロディとリズムに乗ってこそ生きるものであり、国語の教科書を読むように朗読してもそれは抜け殻である。「Make-up Shadow」は甘美なフレーズの羅列、といっても陽水が唄うから甘美に聞こえるのであり、「アジアの純真」に至っては言葉遊びのようだ。

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