拝啓、父上様 林檎を盛大に転がしました

脚本倉本聰のドラマ「拝啓、父上様」(フジテレビ系木曜 22時〜)第 1 話・2 話のディレクター宮本理江子は「ふぞろいの林檎たち」で有名な脚本家・山田太一の娘なわけで、だから何だと言われればそれまでなんだけど、シナリオ本がすでに出版されているからには「北の国から」(1981年10月〜1982年 3月フジテレビ系)におけるスメタナのモルダウのような気の利いた演出も期待してしまうわけで。

「北の国から」第 23 話で令子(いしだあゆみ)の通夜に訪れた清吉(大滝秀治)がおでん屋の屋台で雪子(竹下景子)に自分の長男の話をしていて、牛にクラシックを聴かせると乳をよく出すんだってね、「スメタナのモルドー」をよく聴かせとった、という話をするんだけど、実は第 1 話冒頭で雪子が姉の令子を問い詰めるシーン、喫茶店で BGM に流れているのがそのスメタナのモルダウであり。シナリオ本には第 1 話冒頭のシーンは単に「クラシック」としか書いてないんだけど、それに第 1 話から 23話まで半年近くの間があり、ビデオの普及してない時代にこんな粋な演出をしていたわけで(※)。だから「拝啓、父上様」も全話録画した上で二度以上見てやっと気付くような凝った演出も期待してしまうのです。まして「前略おふくろ様」の流れを汲む作品ということで、「前略おふくろ様」といえばシナリオライター志望者なら必ず観ておけと言われるお手本のような名作、今回もシナリオってのはこういう風に書くんだというのを見せつけていただきたいのであります。

ドラマの公式サイトの「インタビュー」で黒木メイサが

本読みをしてみて1人で台本を読んでる時には気付かなかった、人が発することで起こる笑いが散りばめられているのに驚きました。決しておもしろいことをしているわけではないのに、人と人との会話の中に自然な笑いがあって、思わず「フフッ」って笑っちゃうような部分が所々にあるんです。

と語っているのを読んで、そう言えば「北の国から」でもそういうのがあったな、と思った。この記事で言及した、純が父親に「僕は完全に病気です」などと打ち明ける所、実はその前に父親の五郎が純の隠し持っているエロ本に気付いて戸惑い気味に人に相談したり、そのほかにもいろいろあって単純な話ではないんだけど、それにそのエロ本を五郎が夜遅くに一枚ずつ破って薪ストーブで燃やしている直後に純がやって来てそのシーンが始まるんだけど、純は当然そんな事を父親に告白するのは初めてであり、五郎も父親として性に目覚めた息子と相対するのは初めてであり、互いに相手の反応を探りながらドキドキしつつ会話していて、最後には両者とも安心するというのが見ていて面白い。「でも僕の場合は重症で、朝起きた時にはもうオチンチンが固くなっていて…」「大人の男は、みんなそうだ」これもシナリオ本読んでるだけだと普通に読み流してしまいそうだ。

同じく公式サイトの「インタビュー」で倉本聰は「子宮で泣かせて、睾丸で笑わせろ」と言ってるが、まったくもって理解不能であり。「二宮和也さんにラブコールを送ったと聞きました」という質問に対しては

ラブコールというより、最初から二宮くんに向けて描いた作品です。

そんなことは、全然、知らなかった。

高倉健のために脚本を書いた「駅 STATION」という映画があり、ということは健さん並みの扱いというわけで。それより「北の国から」で有名になったナレーションの「〜わけで」「〜と思われ」という言い回しは、昔ラジオで山下清のドラマを書いたことがあって、その山下清の口調がベースになっているそうで。倉本聰の世代はシナリオでナレーションを多用するのは邪道だと教わったそうで、でも山田太一があるドラマでナレーションをふんだんに効果的に使うのを観て、たぶん「前略おふくろ様」あたりからナレーションを多用するようになったという。

ナレーションも状況説明ばかりではないし、セリフも観る人によっては誤解されることもあると思われ、どのくらい誤解されないように説明するか、またはあえてしないかが脚本および演出の難しい所であり。例えば 2年前「優しい時間」の番組宣伝を兼ねて倉本聰と大竹しのぶが「とんねるずのみなさんのおかげでした」の食わず嫌い王に出た時、倉本聰が山の中を車で走っていたら車にはねられたらしいシカの死体を見つけて、それは放っておいたが、拾って来て肉にして食べれば良かったかと後で思ったけれども、車にはねられたシカは内出血していて肉は不味いからいいかと思った、という話をしたら石橋貴明に「よく知ってますね」と言われて「東大出てるもん」と答えていた。これを聞いて東大卒の学歴を鼻にかけていると感じた人もいるかもしれないが、その程度の知識は地元の人間ならたいてい経験上知っている事であり、だからここでの「東大出てるもん」は子供の自慢程度のものでしかなく本人もそのつもりで言ったんだろうけど、それがわからない人も世間には多数いると思われ。

※「気の利いた演出」「粋な演出」と書いたが、第 1 話撮影終了後に第 23 話の台本を書いたとすれば、別にディレクター側の気の利いた演出ではないな。

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拝啓、父上様 林檎を盛大に転がしました」への1件のフィードバック

  1. あ いやぁ~
    TBありがとうございまっす
    <前略 ショーケン風味(笑)
    なるほど
    りんごを転がしたのは。。。
    ウィキペディアで演出の宮本氏が山田太一の娘さんと知り 
    いささか驚いてたわけで
    「僕は完全に病気です」の純のくだり
    なつかしひです
    ワタシは
    倉本氏が東京の街から
    深川(たしか前略)神楽坂(拝啓)を選んだのが
    何故か好ましい です
    そして 山田太一はロマンスカーで西へ(笑)
    私鉄沿線にコダワル
    (そして季節は冬。。。イメージですが)
    面白いです
    山崎努主演の山田太一ドラマ
    も一度 見たいのはワタシだけでせうか?

    いいね

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