パッチギしても突き破れない壁

約 1か月前にテレビで放送された映画「パッチギ!」を今になってやっと観た。世間では「反日映画」とも評されているが、基本は青春物、でもそれが在日朝鮮人の女子高生に日本人の男子高校生が恋をするという話で、舞台は1968年。

学生運動に精を出す学生が出てきても在日朝鮮人の商売相手でしかなかったり、毛沢東思想に傾倒する高校教師の存在もギャグでしかない。不良高校生同士の抗争なんてのは別に相手が在日朝鮮人でなくても日本人同士でもやる事である。ただ朝鮮戦争やベトナム戦争の話はいいとして、日本が朝鮮半島を植民地支配していた頃、日本に強制連行された朝鮮人がどんな生活をしていたかとか、在日朝鮮人側の言い分は出てきても日本人側の言い分は出てこない。これはちょっと不公平なんじゃないか。「反日映画」と嫌悪されても仕方ないとは思う。

そもそも日韓併合は当時の韓国世論が望んだことだとか、日本の植民地統治が朝鮮半島の近代化に貢献したとかいう恩着せがましいことは言わない。実際に朝鮮人は日本国内で差別されたかもしれないが、第二次大戦終戦直後の一時期、日本人は「敗戦国人」、主にアメリカ人は「戦勝国人」となり、これらに対し在日朝鮮人・台湾人はどちらでもない「第三国人」として微妙な立場になったことがある。この「第三国人」という語は、戦時中は日本の植民地下だったので「日本人」だったのが、終戦と同時に「日本人」じゃなくなった朝鮮人・台湾人を指して言った語である。主に敗戦後に使われた言葉だから「三国人」は差別語であるはずはない。その時期「三国人」が日本国内で日本人に対し横暴を働いたという話もあるし、それから戦後の闇市の多くが在日朝鮮人などの「三国人」を運営者としていたのは、日本の警察による取り締まりを回避するためでもあったのではないか。それなら互いに利用し合う関係であり、物資の不足していた時期だから日本人も闇市に頼らざるを得ず、ここには差別も蔑視もない。

だから在日朝鮮人が日韓併合から1968年までずっと日本国内で虐げられてきたわけではないのに、彼らは日本人への恨みしか言わないように見える。日本人は都市空襲されたり広島・長崎に原爆投下されても今ではあまりアメリカを憎んでいないようだが、朝鮮人は自民族のプライドを傷付けた日本人を、それも朝鮮半島の長い歴史の中で辺境の野蛮人と見下してきた日本人に支配されたことをずっと恨み続けるのだろう。それが彼らの文化らしいのだから仕方ない。むしろ日本人ももう少しアメリカを憎んでもいいんじゃないか。

そういう朝鮮民族の情念とか、日本人の言い分とか、繊細な問題を丁寧に描けばもっと良くなったかもしれない。1968年に女子高生ってことはたぶん在日二世で生まれも育ちも日本、親から朝鮮語と朝鮮民族の文化を継承はしても、自分の本当の故郷はどこなのかよくわからない。だから自分探しの過程で「まだ見ぬ故郷」に思いを馳せる在日の人もいるようである。そこまでは触れても、朝鮮民族の「恨(ハン)」の文化や儒教的価値観に配慮しなければ、在日朝鮮人と日本人の間にある分厚い大きな壁を突き破ることはできない。いや "パッチギ" (頭突き)で突き破らなくても乗り越えられなくてもいい、そこに大きな壁が存在することを意識するだけでもいいと思う。

とりあえずこの程度まで朝鮮人を理解していれば「反日映画」などと非難することもないと思うんだけど、普通の日本人なら反感を持つのかもしれない。「イムジン河」という曲を歌うこのシーンはちゃんと作って、あとは少しいい加減でもいいだろ、という感じで作っちゃったという印象がある。普通の青春物として見ても、なんでキョンジャはすぐに康介に好意を寄せるのかわからない。全部あのシーンのために御膳立てされているだけなのか。

「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)という番組で映画の話になって確か宮崎哲弥が、やはり日本映画には崔監督、井筒監督のような…と持ち上げたら崔洋一が「俺と井筒を一緒にするな!」と言っていた。本気で怒っている風ではなく笑いながらだったのだが、それは同世代で風貌も似ていて時々間違えられる井筒和幸への単なるライバル心なのか、高評価だった「パッチギ!」に崔洋一は在日朝鮮人として違和感を抱いたのか、真意はわからない。俺だったら井筒和幸より鈴木清順、石井聰亙、黒沢清を挙げるな。

ところでなぜ今になって 1か月前に録画した映画を観たのかというと、宮崎あおいの結婚相手がこの映画に出ていることに気付いてとりあえずどんな男か確認しようと思ったからである。彼がこの映画をきっかけに反日言論に傾いたのだとすれば、ちょっと軽率だったんじゃないか。芸能人はしょせん人気商売、客の反感を買うようなことはあまり言わないのが賢明だろう。これは彼のセリフではないが、プロポーズの言葉はやっぱり「トゥリソ ハムケ ハゴシポヨ」だったんだろうか。

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