ニコンはレンズ資産を持つ人々と共に

これから写真を始めようという初心者が、一眼レフカメラといえばニコン、と思って初めてのデジタル一眼レフにニコンを選んだら、かなり面倒なことになるのは間違いない。もちろん D60 とセットで売られている 2本のズームレンズだけをずっと使い続けるというのなら何も問題は起こらないのだが、他のニッコールレンズや他社の F マウントレンズを使ってみようとすると途端にやっかいなことになるだろう。ニコンのデジタル一眼レフは、これまでニコンの一眼レフを使ってきた既存のユーザーだけを相手にしている。画像処理プログラムも既存ユーザーの持つ古いレンズ資産のすべてを生かせるようにという姿勢で設計されている。

D60 は AF モーター搭載レンズしか AF が動作しない、D60 / D90 は非 CPU レンズでは露出計が動かない。CPU 搭載レンズしか使わないのなら D90 でいいけれども、これらの制限を嫌って D300 を買うと今度は倍率色収差軽減なんて機能が画像処理プログラムに入っている。

気になるデジカメ 長期リアルタイムレポート ニコンD300【第7回】D300にもある「倍率色収差軽減」 (デジカメWatch、2008年 5月21日)

倍率色収差なんてのは本来レンズ設計等で回避するものだと思うのだが、これがあるのは古い F マウントレンズで撮ってもそれなりにきれいな画像を得られるようにと配慮した結果のようだ。そんな機能にソフトウェアリソースを割かなくていいからその分コストダウンして低価格で販売してほしい。古いレンズなんて使わない。デジタル対応であるコシナのカールツァイス ZF レンズを使いたいが非 CPU レンズなので露出計が動かないとかなり使うのが面倒だ。ZF をあきらめて D60 にすると今度はピクチャーコントロールがない。間を取って D90 にするくらいなら、レンズによる機能制限のないキヤノン EOS Kiss X2 か EOS Kiss F で十分だろう。

ニコン F マウントというのは銀塩一眼レフに AF がなかった頃から何度も拡張を重ねてきて現在に至っているものなので、かなり複雑な体系になっている。同じ CPU 搭載レンズでも G/D タイプと P タイプ(Ai-P)とでは使える測光方式に違いがあるらしい。なんでそんな違いができてしまったのかわからない。G と D の違いは、G は絞りリングがないんだったか。

倍率色収差軽減は古い F マウントレンズを持っている人のために用意されたものであるが、そもそも CCD という技術すら存在しなかった時代に設計・製造されたレンズをデジタルでも使おうという発想自体に無理があるだろう。銀塩フィルムは撮像素子のように正方形の画素が整然と並んでいるわけではないし、ローパスフィルターもない。D300 の場合 135(35mm)フィルムの半分未満の面積である APS-C サイズの撮像素子に有効1230万の画素が詰め込まれているが、昔のレンズの解像度で満足に解像できるんだろうか。撮像素子表面で反射した光がレンズ最後端で再反射してゴーストやフレアが発生するなんてことも、昔のレンズ設計時には想像できなかったろう。それらを考えるとキヤノンの APS-C サイズセンサー機とデジタル専用である EF-S レンズだけを使うか、あるいは撮像素子の特性を考慮してレンズマウントから設計したフォーサーズにする方が理に適っている。

4月に書いた記事で、D3 に追加されたヴィネットコントロールで画像を補正すれば「古いニッコールだろうがコシナのツァイスレンズだろうが全部同じ色になるのだろうか」と書いてしまったが、ヴィネットコントロールを使用できるのは G または D タイプの CPU 搭載レンズだけで、さらに同梱の RAW 現像ソフト ViewNX や別売の Capture NX と連動させて使うものらしい。コシナの ZF レンズは CPU 非搭載、フォクトレンダー SL II レンズは Ai-P 相当であるから、ヴィネットコントロールによる周辺光量落ちの補正はできないだろう。

ニコンD3の新機能「ヴィネットコントロール」を試す (デジカメWatch、2008年 5月 2日)

このヴィネットコントロールはもともと Capture NX 等に搭載されていた機能だそうだ。

【特別企画】D700でカールツァイス/フォクトレンダーレンズを試す (デジカメWatch、2008年 8月21日)

Distagon T* 2.8/25 ZF の作例の下に「D700のヴィネットコントロールで対応できるだろう」とあるがたぶん間違いだろう。それとも D700 では非 CPU レンズでもレンズ情報を入力すればヴィネットコントロールを利用できるようになったんだろうか。

ちなみに OLYMPUS Studio 2 や E-3 にも「シェーディング補正」という同様の機能がある。

このヴィネットコントロールは主に 135 サイズセンサー機(いわゆる 35mm 判フルサイズ機)向けの機能だろうが、一眼レフに広角レンズの絞り開放近辺で周辺光量が落ちるのは銀塩カメラでも普通のことである。デジタルの場合はこれに加えて撮像素子は斜めから入ってくる光を結像しにくいという特性がある。D3 や D700 に広角レンズで絞り開放で撮った場合、周辺減光が銀塩の頃と同じ普通の減光なのか、それとも撮像素子の特性による周辺減光と画質劣化も起きているのかがわからない。それは古いニッコールレンズであれデジタル対応の ZF レンズであれ同じである。それを G/D タイプに限ってだが一律にソフトウェアで補正してしまうというのは、写真に対する正しい態度なんだろうか。補正は補正でしかなく失われたシャープネスが復活するわけではないし色にじみが消えるわけでもない。ヴィネットコントロールは急場しのぎであり、本来なら周辺部でも適切に光が結像するように撮像素子やレンズを設計するべきである。ともかく周辺部の減光の仕方やボケ味にこだわりのある人はニコンの 135 サイズ機を使わず銀塩カメラを使い続ける方がいいだろう。

デジタルの写真は銀塩とは別物、補正してナンボ、という考え方もあるかもしれない。しかしこれら倍率色収差や周辺画質劣化などデジタル特有の問題は、ソフトウェア処理でなんとかするのでなく、ハードウェアの設計段階でできる限り起きないようにするのが理想だと思う。それらのソフトウェア補正を前提としてデジタル写真を撮るというのは、レンズと撮像素子で写真を撮っているというより、画像処理ソフトウェアが写真を作ってくれているということになってしまわないか。それにニコンの提供する補正技術がみな支持されているわけではなく、実際ヴィネットコントロールは今のところ不評のようである。

ところで D90 では動画を撮れるそうだが、動画撮影時はマニュアルフォーカスだそうである。例えば 50mm F1.4 のレンズで絞り開放で撮るとすると、被写体が少しでも動いたらピント位置からずれてしまう。動画というのは動く被写体を撮るものである。全く動かない被写体をカメラを固定して撮ってもそれは動画ではなく「音声付き静止画」である。かといって 50mm で F8 位に絞ってピントの合う範囲を広くするとそれではコンパクトデジカメで撮るのと大して変わらない。動画撮影時はコンティニュアス AF じゃないと意味がないだろう。

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ニコンはレンズ資産を持つ人々と共に」への2件のフィードバック

  1. デジカメWatchの 5月 2日の記事、

    『ニコンD3の新機能「ヴィネットコントロール」を試す』

    によれば、D3 においてヴィネットコントロールを適用した RAW 画像を
    Capture NX で開いて、「エディットリスト」からヴィネットコントロール
    機能を呼び出したら、すでに「適用量」が 70%等になっていた、
    とのことですが、D700 に非 CPU レンズでもそうなるのでしょうか。

    とはいえ従来から Capture NX 等にヴィネットコントロールは
    あるわけですから、カメラが D90 や D60 で非 CPU レンズであれ
    ヴィネットコントロールは使用できるであろうことは想像できます。

    赤城耕一氏の記事に「D700のヴィネットコントロールで対応できるだろう」
    ではなく、Capture NX 2 のヴィネットコントロールで対応できるだろう、
    と書いてあれば「たぶん間違いだろう」とは書きませんでした。

    ZF やフォクトレンダー SL II レンズでヴィネットコントロールは
    使用できないだろう、という記述の誤りは認めます。

    いいね

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