キヤノンのレンズ周辺光量補正はレンズ設計の敗北宣言

銀塩カメラがレンズとフィルムで写真を撮るように、デジカメでもレンズと撮像素子だけでできるだけ撮りたい。もちろん画像処理エンジン等がなければ写真にならないのだが、直前の記事で触れたニコンの倍率色収差軽減やヴィネットコントロールのような、デジタルに不向きのレンズで撮った画像を修正したり周辺部の画質劣化をごまかしたり、といった処理をソフトウェアでしてほしくない。醜い画像データの修正は修正でしかない。醜くない画像データを得るために、デジタルの撮像素子を想定して設計したレンズを使い、周辺画質劣化を起こしにくいように撮像素子を設計するべきだと思う。

●画像処理エンジンはノイズ軽減と絵作りのみに

高感度ノイズ・長秒時ノイズはデジカメにとって宿命のようなものだろうから、これはソフトウェアで処理するしかないだろう。撮像素子をノイズの発生しにくい設計にするとか、撮像素子にノイズ除去回路を組み込むとかして、それでも発生したノイズは画像処理エンジンでなんとかする。画像処理エンジンはこういう「不快なもの」の抑制と、後はキヤノンでいえばピクチャースタイルのような「絵作り」に徹してほしい。

小さな撮像素子にたくさんの画素を詰め込むことでダイナミックレンジが狭くなる問題は、デジタル写真はこういうものなんだ、という諦めもありだと思うのでどっちかというと「絵作り」の部類に入ると思う。どのメーカーも撮像素子自体のダイナミックレンジを広げる努力をして、その上で「アクティブ D-ライティング」「高輝度側・階調優先」「階調オート」などのソフトウェア処理機能を用意している。

こういう考え方、つまり画像処理ソフトウェアはレンズや撮像素子などハードウェアの設計でどうしても回避できなかった「不快なもの」の軽減と、写真の発色などの「絵作り」だけに徹してほしい、という考え方から、直前の記事でニコンの 135 サイズ機等を批判した。ここではキヤノン EOS 50D の「レンズ周辺光量・自動補正」機能への疑問を書く。

● APS-C サイズ機に EF レンズでも周辺光量が落ちるのか

EOS 50D の撮像素子は APS-C サイズ相当といっても他社より一回り小さい 22.3 x 14.9mm である。ニコン D90 は 23.6 x 15.8mm。EF レンズは銀塩 EOS やデジタルでも 135 サイズ機を想定して作られている。添付アプリケーションの EOS Utility には EF レンズの補正データも含まれているようである。APS-C サイズデジタル一眼レフ専用である EF-S レンズならともかく、EF レンズを APS-C サイズ機で使用したらレンズのイメージサークル周辺部の光は撮像素子に結像してないはずである。それでも画像周辺部の光量が低下するとしたら、レンズ設計に問題があると思う。あるいは撮像素子のマイクロレンズ間の隙間をなくしたというが、それでも斜めから入ってくる光は結像しにくいということなのか。

直前の記事で書いたように、一眼レフに広角レンズの絞り開放で周辺光量が落ちるのは銀塩カメラでも普通のことである。少々の画質劣化があっても、広角で絞り開放の写真というのはこういうものなんだ、と思えばいい。それを承知の上でそれでもデジタルなんだから補正したい、という人のためにオリンパスも「シェーディング補正」という機能を用意している。これは上で書いた「絵作り」に相当するものである。しかし APS-C サイズ機に EF レンズ、それも高価な L レンズでも周辺光量が低下するというのは、レンズ設計に問題があるのか撮像素子に問題があるのか、両方に問題があるのか。

それよりこういう機能が今後搭載されていくことによって、この先 EF/EF-S レンズは補正用データ込みで設計・製造されることになるのだろうか。撮像素子の改良、特に斜めからの入射光に弱い問題に対処するような改良はなされなくなるのか。そして周辺画質は劣化したまま補正データでごまかし続ければいいとなるのか。

ニコンのヴィネットコントロールも含めて、周辺光量補正自体を批判するつもりはない。「絵作り」の一つとしてあっていい。ただしハードウェア設計面で周辺部の画質を確保した上で行うべきであると考える。補正データによるソフトウェア補正に頼りきってレンズ設計・製造で手抜きをしたり撮像素子の改良を怠ったりするのであれば、そんな不誠実なシステムはいらない。

もっともこれは実際に EOS 50D でレンズ補正データなしで撮った画像を見ないと判断できないことであるが。レンズの補正データを登録しても補正「しない」も選択できるので、不要と感じた場合は使わなければいい。この機能は EOS 5D 後継機のような 135 サイズ機だけに搭載するべきだと思う。

ちなみにニコン D90 の「ゆがみ補正」という撮影後の画像編集機能もレンズ情報を元に自動補正できるそうだが、これは今のところ「絵作り」のうちに入ると思う。ただしそのうちレンズ情報によるソフトウェア補正を前提としたレンズ設計が行われないとも限らない。歪曲収差のソフトウェア補正もレンズ設計でどうにもならなかった場合の最後の手段としてほしいが、でもなぜかあまり抵抗を感じない。

●オートライティングオプティマイザについて

4月に書いた記事でキヤノンの APS-C サイズ機について触れなかったのは、EOS Kiss X2 と EOS 40D を比較して画質面での性能差がほとんど見つからなかったのと、Kiss X2 以降で導入された「オートライティングオプティマイザ」についてもっと調べて考える必要があると思ったからである。この機能も「絵作り」の一つであろう。ただの顔検出や初心者向け自動補正機能として侮ってはいけないと思う。

露出アンダーになった画像の全体を明るくしたり、人物撮影において逆光またはフラッシュ光量不足で暗くなった顔を検知して明るくしたり、低コントラストな画像のコントラストを上げたりといった自動補正を画像処理エンジンが行う機能であるが、初心者がこの機能に頼りすぎると、EOS Kiss ではきれいな写真が撮れたのに他社のデジカメや銀塩カメラではきれいに撮れない、なんてことになってしまう恐れがある。キヤノンとしてはそれでもいいのだろうが。じゃあこの機能をオフにすればいいのかというと、フラッシュ光量不足時の顔検知なんかは利用したいし、でも勝手に明るさやコントラストまで手を加えられるのは気に入らない。RAW で撮って現像時になんとかできればいいが、と思っていたら、添付アプリケーションの Digital Photo Professional に「トーンカーブアシスト」という似た機能があるという。

気になるデジカメ 長期リアルタイムレポート キヤノンEOS Kiss X2【第6回】顔検出と連動する「オートライティングオプティマイザ」 (デジカメWatch、2008年 5月22日)

ややこしいので、この「トーンカーブアシスト」「オートライティングオプティマイザ」を統合して一つにして、それを Digital Photo Professional とカメラボディ両方に搭載してくれないか。そして「使う」「使わない」や「強」「弱」ではなく、「露出調整」「顔検知」「コントラスト調整」「トーンカーブ最適化」などの設定項目を設けて、これらのうち一つまたは複数を選択して適用できるようにしたらどうか。

などと考えていたら EOS 50D が発表されて、オートライティングオプティマイザが Digital Photo Professional にも搭載され、その適用も「使う」「使わない」から「標準」「弱め」「強め」「しない」の 4段階で設定できるようになった。各補正効果を分割しての選択適用は実現しなかった。そのうち Kiss X2 ユーザーにもこの新しいバージョンの Digital Photo Professional が提供されると思うが、これのオートライティングオプティマイザ機能は残念ながら EOS 50D で撮影した RAW 画像にしか適用できないそうだ。

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