登場人物同士が有機的に化学反応し合う

「ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜」(フジテレビ系月曜 21時〜)がごく普通の月9ドラマ、誰それと誰それがくっついたとか離れたとか三角関係とか裏切りとかすれ違いとか、ただそれだけの若者の恋愛を描いたドラマだったら第 8 話まで観ることはなかった。いかにも月9的な豪華キャスティングに最初は面喰らったけれども、月9だからフジテレビの意向もあってそうなったというだけで、豪華である必要はこのドラマの場合ほとんどないと思われる。

最初にストーリーを作って、そのストーリーにうまくはまるような設定と性格の登場人物を後から作って、ストーリーの中にはめこんでいくという作り方をしたようなドラマが最近多い中で、このドラマはまず最初にテーマがあって、先にいろんな設定や性格の人物をたくさん作っておいて、そこからストーリーを転がしていくという作り方をしているように見える。最初にストーリーや舞台設定を作ってしまうと、その枠内でしか動き回れないこぢんまりした登場人物しか作れない。先が読めてしまうし、そんなお行儀良いだけの奴いねえよ、人間を描け人間を、といつも思ってしまうのである。でもこのドラマは先に人物造形をしているので、登場人物が互いにどんな風に駆け引きし合うのか、たくさんの人物がいろんな形で関与し合う複雑な様が見ていて面白い。

誰と誰がくっついて誰と誰が対立するかは予想できても、それがどういう過程を経てそこに至るのかまでは予測できない。ここは脚本家・演出家の腕だろう。これまで何度も作られてきたような、とっくに見飽きたありきたりのラブストーリーの展開にはしない方針のようだ。決して単純な構図にしない、登場人物も類型的ないかにも作り物といったキャラクターにしない、そういう方針に好感が持てる。例えば相武紗季演じる役はただの「悪い子」じゃなかったという所だけ見ても、自分の作った登場人物に対する作者の愛情のようなものが感じられる。念のため言っておくが俺は相武紗季はあまり好きじゃない。

でもこのドラマをこんな風に見られずに、誰と誰がくっついて誰と誰が離れて誰と誰が対立してという所にしか関心が向かなかったり、ただの「悪い子」だけを欲して憎んだり、そういう見方しかできない視聴者がたくさんいるんだろうな。哀れである。「花より男子2(リターンズ)」(2007年 1月 – 3月 TBS系)の終盤にただの「悪い女」が登場したけれども、主人公をハッピーエンドに持って行くためにその「悪い女」をいけにえ・人身御供として捧げなきゃならないなんて、女って恐ろしい、と思った。しかもそれに拍手喝采を送る視聴者がたくさんいたらしいことにも失望した。同じスタッフで作った「スマイル」(2009年 4月 – 6月 TBS系)も、この人はいい人、この人は悪い人、と単純に白黒色分けして、リアリティのない「差別」をでっち上げて偽善に自己満足しているだけであった。学校の先生が「とってもよくできました」とほめてくれそうな道徳的なドラマであった。

ところで橋田壽賀子脚本の「となりの芝生」(TBS系水曜 21時〜)を先週 8月26日放送の第 9 話で初めて観た。姑が嫁をいじめる話という予備知識だけで観たので、各登場人物がどういう状況に置かれているかを把握するため頭の中をフル回転させて観たのだが、とにかく言語化できるものはことごとくセリフにしてしまうというスタイルなので大体は把握できる。全部を詳細に把握しなくてもいいやと思って観た。「渡る世間は鬼ばかり」も放送中はあえて数か月に一度しか観ない。全体を把握する気はないし、数か月に一度頭をフル回転させる方が刺激的だと思うからである。橋田壽賀子脚本のドラマは単発のでもそうなんだけど、言語化できるものはできるだけセリフにして、でもその大量の言葉の洪水の向こうに、あえて言語化してない何か、複雑な状況なり心境なりといったものがあってそれが遠くから伝わってくるような感じがする。それが快感なのである。

橋田壽賀子は自分のスタイルを確立している。「ブザー・ビート」の大森美香も自分のスタイルを確立しつつあるように見える。

さて、こんな記事を見かけた。

北川景子の棒読みはアリ? (ココログニュース、2009.08.31 17:00)

棒読みと思ったことはないな。ドラマの登場人物同士のセリフでの駆け引きとか、各人物の置かれた立場を想像するのに忙しいんで。それに演技力が要求される役でもないし。少なくとも観てて引っかかるほどの下手さではないと思う。貫地谷しほりと北川景子のガールズトークと呼んでいいのかわからないが、あの二人はあえて距離を取りつつ互いの事をよく見ている、そんな微妙な雰囲気はセリフの端々から伝わってくる。その一言はスルーかよ!といったツッコミどころが結構あるよ、よく聞いていると。

俺はアイドル好きだから確かに若手女優の演技力の評価は甘いかもしれない。それに昨年秋頃から北川景子のブログをずっと読んでいるので、個人的な思い入れもあるかもしれない。あんなに長文をちゃんと書ける若手女優はなかなかいないよ。最近仕事が忙しいせいか長文がないけど、仕事があるのは喜ばしいことだ。

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